原題: The Trial
既存の翻訳(人の手による訳) · 訳 原田義人 (†1960) · 出典: 青空文庫 Aozora Bunko · パブリックドメイン
誰かがヨーゼフ・Kを誹謗したにちがいなかった。なぜなら、何もわるいことをしなかったのに、ある朝、逮捕されたからである。彼の部屋主グルゥバッハ夫人の料理女は、毎日、朝の八時ごろに朝食を運んでくるのだったが、この日に限ってやってはこなかった。そういうことはこれまであったためしがなかった。Kはなおしばらく待ち、枕についたまま、向う側の家に住んでいる老婆がいつもとまったくちがった好奇の眼で自分を観察しているのをながめていたが、やがていぶかしくもあれば腹がすいてきもしたので、呼鈴を鳴らした。すぐにノックの音が聞え、この家に… 「どなたですか?」と、Kはききただし、すぐ半分ほどベッドに身を起した。冒頭 · 原田義人